いっちーの感想
魔笛はいっちーが一番好きなオペラです。ただ、普通のオペラに比べて登場人物の普通の会話が多く、オペラというよりも「歌付きの芝居」であると一般的には言われてます。大衆娯楽用の芝居として製作されたようで、現在のドイツで上演される場合も、ミュージカル観劇気分で割と気軽に見に来る感じみたいです。今から200年前の作品ではありますが、ほとんど現代ドイツ語の知識で理解できるようで、字幕はありませんでした。
よく言われることではありますが、この作品の見所は、「夜の女王のアリアの出来」と「パパゲーノの出来」の2つに尽きるかと思います。これら2人はどちらも脇役なんですが、割と主役がどうでもいいオペラかなーと思います。
ちょっと解説を加えますが、「夜の女王のアリア」とは、ソプラノの難曲中の難曲として知られる曲で、第1幕と第2幕に1曲ずつありますが、普通は第2幕の方を意味します。しかし、第1幕のアリアも聴き所で、夜の女王の登場時に歌われるこの曲は、ゆっくりしたレチタティーフから始まり、それから超高音域のコロラトゥーラで締める、すごいいい曲です。第2幕のアリアは、第1幕のと似たメロディで、更にドラマチックさを増した形で挿入されています。
んで、「パパゲーノ」というのは、ストーリィ上は脇役なんですが、本オペラの台本作家シカネーダーがこの役を演じたこともあり、非常においしい役どころが与えられています。更に、彼はモーツァルトのマブダチだったこともあり、とても素敵な曲までも与えられています。このパパゲーノというキャラクターをどう演出するか、これが、このオペラの第2の見所かなあと思っています。
さて、まず夜の女王のアリアの出来ですが、第1幕はうーん。。って感じでした。声出てないし、音外してるし。。と思ってたら、後ろで思いっきり舌打ちしてるやつが!うーむ。。それは幾らなんでも可愛そうだろ。。そんな感じの不満の残る第一幕の夜の女王でしたが、なんと1幕終了後のカーテンコールに夜の女王が出てこなかった!あれー?やっぱ、失敗気味だったから、客に顔見せできなかったのかな。。んで、第二幕のアリア。こっちは第一幕よりもグッと良くなって、声がいまいち小さくて、微妙に音を外してるとこがあったものの、まぁ及第点かなーと(偉そうなこと言ってすいません。。)。第二幕では大喝采を浴びてました。
そしてパパゲーノですが、この演出完璧っす。たまにピエロみたいなパパゲーノがいるんですが、今回のは衣装が可愛い感じに仕上げられてて、それがコミカルな演技と完璧にマッチしてた。特に素晴らしかったのが、有名な「パ・パ・パ」の歌で、この部分の歌詞は「パパゲーノはパパゲーナ(お嫁さん)と結婚して、たくさん男の子と女の子を作るんだ!」みたいな意味なんですが、その時にパパゲーノとパパゲーナの衣装をつけた子供たちがわーっと舞台に入ってきて、パパゲーノびっくり!みたいな演出をしていました。これ、最高です。素晴らしい。曲の途中なのに、客も大喝采してました。※拍手は曲が終わってからするのがマナーなんだけど、あまりに素晴らしすぎて我慢できなかったんでしょう。
その他思ったことですが、オープニングが非常に良かったです。今まで昼間に設定してるのしか見たことありませんでしたが、この演出では夜に設定していました。序曲が終わり幕が上がると、そこは夜の岩山。3人の魔女がその岩山に佇み、空に浮かぶ満月の中に夜の女王が鎮座する(右の画像)。夜の女王が空に消えていくと同時に、タミーノが暗闇の中、大蛇に追いかけられながら現れる、、、という演出で、とても幻想的なムードでした。また、大蛇が火を噴くシーンで、半端ではなくでかい炎を吐いていて、観客もビックリ!してました。パパゲーノの登場シーンも良かったですね。彼の頭の上を小鳥が飛びまわっていて、演出細かいなあと。。
あと、タミーノは普通。パミーナは良かったけど、声がドラマチック過ぎるかなと。パミーナはもう少し軽めの声がいいかなーと思いました。ザラストロも良かったっすね。彼ら3人の三重唱(試練に赴くタミーノとの別れのとこ)はかなり良かったっす(曲が良いという話もあるが)。パパゲーナはもう少し老婆のときの声がコミカルだったら良かったかなーと思いました。
基本的には大満足のオペラです。素晴らしい!ツアーの最終日を締めくくるに相応しいオペラでした。夜の女王の出来が良いときに、是非DVD化して欲しいなー。
(追記) Bayerische Staatsoperのページに、舞台のビデオ映像がありました。編集があんま良くないけど、舞台の様子が良く分かります。この時の夜の女王はかなり気合入ってますね。でも、こういう小さい動画だと、舞台の感動はなかなか伝わらないですね。。
なお、DVD化の予定についてStaatsoperに問い合わせてみましたが、今のところその計画は無いようです(2004.11.11現在)。
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